「疲れると歯茎が腫れるんです・・・治療してかぶせて1年たっていないんです・・・何回か治療しているんです。半年くらいかけて治したのに・・・時間も費用も無駄でした!」と転院での初診の患者さんです。
今回の歯ぐきが腫れる原因の鑑別には、歯周病と根尖性歯周炎(主に神経をとってある歯に起きるもので歯の根の先端が化膿する病気)そして、歯根破折の診断が必要になります。
患者さんの許可を得てレントゲンを撮影しました。
歯周病は、歯を支える骨がなくなる病気ですので、多くの場合レントゲンで診断ができます。骨は吸収していませんでしたのでは歯周病ではありません。
残りは、2つの診断です。
根尖性歯周炎では、根の先端に黒い影が映ります。但し、治療を終え日が浅いときは、完治途中で黒い影が映ることがあり診断が難しくなります。中には、数年たっても影が消えないことも珍しくありません。わかりやすく表現すると根の先に陰影があっても病気とは限らないという事です。
歯根破折の場合の初期段階では、同様の映り方をすることがあるので慎重に診断することが必要です。
根尖性歯周炎か歯根破折か診断がつかない場合は、確定診断できるまで(レントゲンで破折線が確認できるまで)経過を見るか、根尖性歯周炎と仮定し治療を行い、結果として腫れが引けば事後診断として「根尖性歯周炎」。
腫れが引かない、或いは、一度腫れは引いたが治療が完了したのち腫れてしまう場合は「歯根破折」と診断するしかありません。
歯医者泣かせとも言えます。
ここで問題となるのは、治療を終えてかぶせたのにすぐに腫れてしまう場合、患者さんは、治療に疑問を持ちますので、医院を変えるケースが多いという事です。
また、同じ治療を繰り返し色々な医院で行っていることもあります。今回の患者さんも3回過去に違う医院で治療したそうです。
患者さん曰はく「私、歯科難民状態です」とお話しされお困りの様子でした。
患者さんには、次のようにお話しさせていただきました。
前医先生の根の中の治療は問題ありませんので、過去に3人の先生が治療して治りきらないのであれば、おそらく私が再度治療しても同じ結果になると思われ、歯根破折の可能性が高い。抜歯も治療の選択肢であること。(以前、記載しましたがダメな歯を無理やり残すことは、治療ではないと考えています。もちろん歯を残すことは大切であると思いますが・・・)
患者さんは「抜歯ですか・・・何とかなりませんか・・・」とため息です。
治療希望で、セカンドオピニオンの患者さんではありませんでしたが、大学病院の受診検討をおすすめしました。
治療は、患者さんご自身が納得したうえで開始します。
蔵前ジェイエムビル歯科医院
院長 野崎康弘