先日、厚生省から発表された全世代を対象とした「健康意識に関する調査」の中で健康感を判断する際に重視した事項として「美味しく飲食できる事」が40.6%と「病気がない事」の63.8%に続きました。
また、健康に不安があると回答した方の理由として「歯が気になる」が26.2%を占めました。
このことは、裏を返せばかなりの人が、「今後、美味しく食事が出来るか不安である」という結果であると思います。
摂食嚥下機能(食べ物を口に入れ噛む・飲み込むこと)は、個人差はありますが年齢とともに衰えます、以前は、食事中にムセなかったのに最近ムセるようになった。また、食後に暫くしてからせき込むようになったなどは、嚥下障害のサインです。
では、どの様な対策があるのでしょう?

怪我の後や病後のリハビリというのは、よく耳にしますが、お口のリハビリは馴染みが少ないと思います。実は、お口のリハビリ(摂食嚥下機能回復のリハビリ)は、歯医者の診療領域で色々な指導が行われ、時には、その方の飲み込みの機能(嚥下機能)が低下している場合、常食と呼ばれる健康人が食べる食事が窒息の危険を伴うことがありますので、食事内容にも考慮をすすめます。
毎年、お正月になりますと「お年寄りが餅をのどに詰まらせる」報道があります。これは、嚥下機能の低下した方が、それに気付かなかった為と思われます。信じられないかもしれませんが、常食でも喉に詰まったものを吐き出すことが出来ないご高齢のかたは、沢山おられます。
健康人であれば、咳をして喉に詰まったものを吐き出すわけですが、この機能が衰えてしまっているのです。
また、嚥下機能の低下は、誤嚥性肺炎にもつながりますが、こちらも適切なお口のリハビリとプロによる適切な口腔ケアと指導でかなり防止できます。
介護予防という言葉があります。歯科の分野では、美味しく食べる機能を維持または、向上するためのトレーニングすることで、十分な栄養を取り健康を維持し要介護に出来るだけならないようにするという介護予防の一つを担っています。
虫歯と歯周病が予防が大事であるのと同じく「美味しく食べる」機能維持にも予防が大切です。

最後に、私が拝察したご高齢の患者さんとのエピソードをお話ししてこのページは、終わりたいと思います。
ある訪問先の100歳を迎えようかという女性の患者さんです。「こんにちは、はじめまして歯医者の野崎です。お食事美味しく出来ていますか?」私の問いかけには、瞬きをするだけです。
お口は開いたままで多量の唾液がエプロンに流れ落ちており、どうやら唾液を飲み込めない様子でした。
介護者さんに聞いたところ入れ歯は暫く入れておらず、食事は、ミキサーにかけたものを僅か召し上がられているとの事でした。
食事風景を見させていただいたところ、飲み込みは、よくないものの食べ物を咀嚼するお口の動きは、よく出来ていましたので、入れ歯を装着すれば、形のある食事が出来るかもしれないと期待が持てました。
しかし、いきなり入れ歯を作ると窒息の危険があるため、お口の筋肉を活性化させるためのマッサージから始めました。介護者さんにも毎日行ってもらいました。
ある日、今まで発語がなっかた患者さんですが、「お赤飯が食べたい」と小さな声でしたが、私に話しかけてくれました。(患者さんは、お赤飯が大好物だそうです。)
さあ、ここからが入れ歯の製作開始です。
入れ歯を作る前には、飲み込みなどの衰えた機能を回復することが重要です。機能が回復していない方への入れ歯制作は、窒息の危険がありますので、慎重に診査することが望まれます。
現在、この方は、お赤飯とまではいきませんが、形のあるものを食べることが出来るようになっています。
そして、体調も以前より安定しており「おいしく食事ができる事は、素晴らしい!」と改めて教えていただいたような気がしました。

食事は、健康の源であり、人生の楽しみです。口腔機能を維持して、おいしい食事を摂りましょう。

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蔵前 ジェイエムビル歯科医院
院長 野崎康弘