
痛いのを治すために歯医者に行ったのに、治療する前より痛いなんて・・・なぜ!!

私たち歯科医にとって診断が難しいケースで稀に見られます。例えば、歯周病と神経の炎症の因果関係が挙げられます。
先日、拝察しました患者さんで「他の医院で歯周病との診断で、歯周ポケットの中の汚れを除去したところ、痛みがどんどん強くなってしまい、痛み始めてからすでに2週間が経過し、痛み止め効もかないし、あまりの痛みに抜いてしまってもかまわない」とお話しされました。
まず、痛む歯の歯周病の検査(歯周ポケットの深さの測定)から行いましたが、基準値を若干超える程度で、痛みが長く続くケースでないため、更に、診断をするためにレントゲンを撮影したところ、その歯には、神経にとても近い虫歯の治療の痕がありましたが、虫歯にはなっていませんでした。
以前治療した虫歯がとても深く、金属製の詰め物を伝わる温度刺激に神経が耐えられずに強い炎症を起こしたための痛みでした。
ようするに、虫歯でないのに歯が痛くなっていたわけで、私たち歯医者としては歯を削って神経を取るべきかの診断がとても難しい症例です。
この患者さんの場合、該当する歯は、歯周病が見られましたので原因である歯周ポケット内の汚れを取る事は、必要であったわけですが、すでに神経の炎症が始まっていたため、刺激により、かえって痛みを増強させてしまった結果になってしまったわけです。

私見ですが、持続的な激痛と温かいものがしみている場合、加えて痛くて噛めない状況では、患者さんとご相談の上、神経を取り除く治療を優先すべきと考えています。(症状によって回復の可能性があると判断した場合、神経を残すためレーザーや薬を詰める鎮静療法を行うこともあります。)
また、過去に虫歯の治療をしていない歯でも、歯周病により著しく歯ぐきが後退した場合、度を超えた知覚過敏として同様の症状が出る事があり、神経を取り除くことがあります。
この病名は、全部性歯髄炎と呼ばれ歯の痛みの中でも拍動痛(血液の流れに合わせてズキズキする痛み)を伴い、夜も眠れないほどの痛みが出て、神経を取らない限りは、痛みが引く可能性は、ほぼありません。

※歯の神経は、出来るだけ残すべきですが、止むを得ない事もあります。また、一部性歯髄炎(通常、熱いものがしみたり、噛むと痛い事は、ほとんどありません。)と呼ばれる神経の一部のみが炎症を起こしている歯は、神経を取らずに鎮静療法を選択し神経を残します。
歯の痛みの原因を診断するには、必ず虫歯の有無だけでなく歯周病の検査を合わせて行うことが肝要です。

蔵前 ジェイエムビル歯科医院
院長 野崎康弘
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